奥さんのお孫さんが一浪して希望する大学に受かったそうな。何か忘れたけど、なんかの研究をしたくて。
お孫さんを自慢の材料にするくせにアホな研究やろとかいちいち余計な暴言を吐く奥さんは癪に触りますが、とにかく一浪して夢を叶える入り口に立ったお孫さんはひたすら凄いし尊敬します。

んで、これまた聞いちゃいないのにこれからのお孫さんの予定も話す奥さん。
もちろん聞いちゃいないのに大学名まで教えてくれました。
うーん、何か良い例えないかな。よし。仮にキムラスカ県にあるバチカル大学で。バチカルが県庁所在地で、バチカル大学は大学詳しくない私でも「ああ、医学部の……」思い至るくらいの国立の有名大学。

へぇ、それは凄いなぁと思いつつ
「本当に私たちの知ってるバチカル大学ですかね。バチカル市にある○○大学の間違いじゃ……」
「ありそうだよねー。そもそもあの高校から行ける大学じゃないし」
「あーでも一浪してるから、かなり頑張ったのかもしれないですよね……」
と、今までの経験上奥さんの発言の信憑性0ゆえに、先輩と私は『とりあえずバチカル市の大学に行くんだな』と認識しました。


 その翌日。お客さんである事業主さんの奥様が申告書の印鑑を押しにいらっしゃいました。期待を裏切らず自慢を始めました。
「うちの孫こないだ大学受かったんやてー」
「へぇー、よかったねぇ」
「うんバチカル大学」
「えっ……すごいやんか」
「医学部じゃないよ医学部じゃないから!うちの孫アホやから医学部じゃない、アホでも入れる大学やから!!」

各方面に失礼なこと言っているのはいつも通りなのでひとまず置いといて、医学部でないことを否定するってことは、本当にバチカル大学なのか。
すごいねー、頑張ったんだねーと先輩と話しました。


 そのまた翌日。奥さんの娘さん兼お孫さんのお母さんが事務所にやってきました。申告やってもらうために。前触れもなく何事もないように、自分の家のように自然に事務所にやってくる娘さんに最初はマジびびったんですが、これも例年通りなのでもう慣れました。
そこでお孫さんの引っ越しがどうとかの会話をしています。この忙しい時期に家で相談してくんないかなと思っていたら、何かの話の流れで娘さんの口から大学名が出ました。
「キムラスカ県立◆◆大学」
と。

もはや大学名にバチカルすら入ってねぇじゃねぇかああああ!!!!

ええええ、そりゃバチカル市にその大学があるのかもしれないし、そこにも医学部があるのかもしれないけど、かといってあんなにドキッパリ「バチカル大学」って言っといて…!?前日の奥様どころか、私が見てるだけでももう5、6人に自慢してるの聞いてるから、見てない人も入れるとたぶん10人以上に間違ったまま伝わってる。

 これは後に、こんな会話が繰り広げられるんだろうな。
「そういえばお孫さんどう?バチカル大学だったよね?」
「バチカル大学ぅ!?あははははは!うちのアホ孫がそんな国立入れる訳ないやんか」
「えっ……」
「バチカルの、大学の間違いやで」
「ええっ……でも確かにそう言って……」
「言っとらへんてー!勘違いしてるわー嫌やー!」


ああ……目に浮かぶ。だって今までにも幾度となく、上記のようなやりとりを目撃してるから。
こうまで見事に、一応悪気なく大嘘を振りまいておきながら、嘘を吐かれた方が非があるような流れに無意識に持っていく奥さんに、毎度毎度ゾッとします。もう怒りとかじゃなく恐ろしい。思考が理解出来ない。

でもいいよなぁ……これだけ自分が正しいと信じて疑わずに無意識に周りの人間を叩き潰して生きていけたら、ストレスもなく幸せだよなぁ。
絶対なりたくはないけれど。

 来週は仕事休み休みだから、来週中にこの冬の間に溜まったもやもやいらいらをクリアさせて、また新年度も仕事頑張るー!!









 本日の添付は『インデグネイションを唱えてみたノイシュ』
わざとではない。