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飼い犬

本人の怒りが収まらないのに。

蓮もカヅハも居る。

どんだけ忠犬なんだよっていう、
何を思ってるか知らないし、僕関係ないし。
この人に危害が及ぶなら、全力で潰す。
そしたら、ちょっとはこの人も楽になるんじゃないかなって思う。

過去を乗り越える?
乗り越える必要って、そもそもあるのかな。

その過去自体、潰せば良いじゃないって思う。
実、潰す事は出来ないけど。
時間がぽっかりあいて、何をしたか思い出せない。
重度の記憶障害にまでは持って行ける。

いいじゃない?それでも。
それで、自殺の回数も、自傷の回数も減って穏やかになるなら。

傷が増えるのを見たくないって、毎晩来られるのもどうなのって思うし。
っていうか、床で寝るのを何とも思わない辺り、この人もホント忠犬だよね。

馬鹿。
でも、僕は好きだし構わないけど。

君がしたいようにしたらしい。
邪魔な物は、全部消す。
其れは、昨日決めた。

あれだけ泣き狂って。
そんなに苦しんでたのかって、知った。

いつも、心の中で暴れられてると見えないから。
表面であそこまで表情豊かに語られると、見える物もあるよね、っていう。

誰だって、許さない。
この人の生活を脅かす総てを。

必死に向かい合ってる人間を、馬鹿にして嘲笑って、上からしか物が言えない人間は哀れだと思う。
其れに沿う事が出来るのも、人間じゃないの。

ほら、夢衣。
潰してやるから、掛かって来いよ、糞ババァが。


今まで、おーきにやで。

今まで世話なった人らに、ちゃんと挨拶できんくて申し訳無い。

今まで、ワシら、世話なった。
おーきに。

もしよかったら。
また新しいらしい奴等もよろしくやで。

ほな、行こか。
なんや、こわないで。
ほれ、朽菜もビビらんでえーから。
こっちおいでんか。










リセット、開始。

いっそ。

お前なんか知らない。
お前なんか消えて仕舞えと、罵倒された方が楽なんだろうなと思う。

憎まれた方が、よっぽどマシだ。

なんて、思って仕舞う。
明夜や破玲が集めた力は大きくて。
これは、いつかの時まで大切にしておくべき気持ちなんだろうと思う。

俺は、誰とも関わらない。
そうしなければならない。

俺がすべきことは、切り札となる緋里と本人の保護。
全面的な、保護。
彼らがそうしたかった願いを。

俺が、叶える時だ。

抗うのは勝手だ。
だがな。
お前たちは考えたことが無いのか。
関係を過度に持ちすぎるのは、リスキーな事を見ようとしなかったんじゃないか。

失う悲しみを否定はしない。
だが、人格は。
そういう存在なんだ。

誰の、何にもなり得ない。

生きているのはコイツ。
戸籍があるのもコイツ。
今の器はコイツが回してる。

そういうの、ちゃんと見ないと。
コイツを否定してることにならないか。

人格だけの箱庭で。
居心地が良すぎて。
本来の、現実を見えなくしてるのは誰だ、と。

ふと、思うんだ。

其れなりに泣き、苦しみ、やりくしをしてるのは俺達じゃない。
俺たちが回しているのだと、思う所はあったとしても。
行動に移し、他者との関わりを持って生きているのは。

表に居る、人格なんじゃないか。

俺は知ってる。
誰にも見えないところで、色んな細かい調整してんのを。
時々泣きながら、自分を奮い立たせてるのも。

誰かが、いつ、居なくなってもいいように。
ひそかに準備していることも…

包帯

流樹は保険証のようなものだと思う。
リトが傷の3割を負担。
残り8割を流樹が負担する。
そういうシステムだから。
そう言ってしまえばお仕舞だけれども。

それでも彼女は優しく笑ってる。
あの笑顔だけは、貼り付けでもなんでもなく。
血まみれでも、傷まみれでも。
彼女は、絶対に笑顔を絶やさない。

“大丈夫ですから”

そう言う。

だから、アタシは。
彼女の傍らにいる。
アタシは彼女の包帯を代えるしかできない。
でも、代えることができるのは、アタシだけなのだから。














変なこと彼女にしたら、誰であろうと絶対に許さない。

壁。

自分で作った壁は自分だけにしか破れない。

逆に言えば。

自分だけを守る、唯一の壁。

それをいつ、どう、行使しようと。

俺には関係ないけどさ。
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