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夢幻廃墟〜割れた破片〜

忘れるな

自ら望んだ罪を

忘れるな

其の身を縛る鎖をー…


薄暗く、何も無い

かなり広いと推測される空間に、俺は居る

どうやって来たのか?

何の目的で来たのかすら不明だ

「……………」

此処にただ立っていても解決は望めないだろう

ならばー…

俺は真っ直ぐに歩み出した

やがて視界が開けてくる

眩しい明かりに目を細める

「…此処は…」

色とりどりのネオンの光

放置された雑居ビルの路地

…まさか…そんな筈は無い…

辺りを注意深く伺う

見知った街並みはただ静かな夜に照らされているだけだった…

『よぅ』

不意に掛けられた声に素早く身を翻し銃口を向ける

『何だよ、物騒だなァ』

獲物を向けられた存在は動じる事無く笑みを浮かべている

「…お前は…?」

『つれない奴だな、相棒の面も忘れたか?…なぁ、鏡人?』

笑う人物に心当たりは有った

だが、それは同時に有り得無い事だ

無言で銃を構える俺の様子にやれやれ、と肩を落とす

『俺だ、解ってんだろう?』

「…生憎、彼奴は此処に居る事は無い…」

居る筈が無いのなら此処に居るモノは偽物だ

「……お前は、誰だ…?」

敵を見る様な視線で相手を見つめる

奇妙な間が生まれた

『鏡人、お前のそういう所は流石だが、俺は俺でしか無ぇよ。それでも信じられねぇなら、撃てば良い』

身を晒す姿に僅かに威圧される

思考が偽物と告げる

…だが…

その姿が、動作が、声が…

そして君臨者の様な独特の気配が、彼奴を彷彿とさせる

『…迷ってるな…』

「………ッ……!…」

コチラの思考を見透かす様に、相手は笑う

堂々たる猛々しい獅子の様に凛然と立つ相手に、無意識に圧倒されている

『鏡人…俺を撃て』

厳粛な声が耳朶に響く

とっさに顔を上げ、相手の視線とかち合う

真っ直ぐな瞳

強い視線

高まる緊張

『撃て、命令だ』

「…………何故だ…?」

押し殺す様な声でやっと相手に話掛ける

『…お前の罪だから…だ』

驚きに目を見開く

一際大きく鼓動が高鳴った
…コイツは知っている…

スライド映画の様に飛び飛びの情景が脳裏をよぎる

手にした銃に力が籠もった

『撃て』

[鏡人、もし、俺が…]

『…撃てよ…』

[…俺で無くなるとしたら…]

『撃てッ!!!』

[…その時は、迷わず俺を撃てー…]

ーーダァンー!!…

『…そうだ…其れがお前の罪…』

崩れ落ちる相手は笑みを浮かべて居る

『…せいぜい…逃げろ…俺は…お前をー…』

地に伏す寸前にその姿は消えた

やけに心音が五月蠅い

僅かに乱れる呼吸もそのままに、俺は銃を下げた

『…裏切り者…!!』

背後の声に身が硬直する

そろそろ、と首だけを後ろに向けた

絶望と、怒りと、憎しみの色

逃げなくてはいけない

隠さない激しい憎悪に煌めく瞳

…逃げなくては…

『…返して…』

空気を震わせる声が俺を捕らえる

『…返してよ…ねぇ…返してっ!!』

悲痛を帯びた叫びが突き刺さる

『裏切り者…アタシはアンタを赦さない…』

感覚の無い足を無理矢理動かす
『赦さない、絶対に…』

駆け出す体、行く宛等無いのに

『アタシ達はアンタを赦さない!何処へ逃げても、必ず探し出して殺してやるッー!!!』

呪いの様な怒号

随分走った筈なのにまだ耳に届く

「……ハァ……ハァッ……!」

逃げなくてはイケナイ

巡り会ってはイケナイ

何故なら、俺はー…

世界が暗色に変わっても俺は走り続けた

何処か、何処か遠くへ…

此の道の先に何があっても戻る事は赦されない

走り続ける道がやがて瓦礫の残る建物へと変わった

そうして、逃げ続けた俺の耳に、一発の銃声が届いたのだったー…
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