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使えない若手を生む中間管理職

ごく最近、部長クラスの管理職と会話をする機会が、立て続けにありました。そこで教えてもらったのが、悩みというには大げさだけれども、少し注意して見なければならない事象があるのです、という話。

私が、若年層のキャリアについての著書がある、もしくは、こういう場でコラムを書いている、というバックボーンがあっての、ある種のネタ振りという可能性はありますが、会う人ごとに似たようなことをおっしゃるので、もしかしたら、ビジネスの現場では当たり前のことになっているのかもしれません。

 中間管理職。手元の辞書によると「直接現場や部下を管理する責任者、一般の会社の課長係長クラス」の人たちが、入社3年目あたりの若手とコンフリクトを繰り返しているというのです。その理由にあるありふれたフレーズがあり、それがなかなか興味深く、意外に難しい問題を含んでいました。ということで、今日はそのあたりのお話を。

●イマドキの若手は本当に使えないのか? 考えたほうがいい

 以前の連載で、私は以下のようなコラムを書きました。

 学生時代に「名ばかり起業」ではなく、世の中に十分認められるサービスやプロダクトをリリースしていた、ほとんどベンチャー企業の経営者と変わらない……いや、むしろ、「ベンチャー企業の経営者が学生『も』やっていました」という人たちが入社してくる時代になっているけれども、それを受け入れる覚悟が企業にはあるのか? という話でした。

 掲載後、かなり反応があったようで、ネット上では「こういう時代の変化は大歓迎である」という声が多かったように記憶しています。一方で、リアルで会った人からは「あのコラムに書かれているような学生はうちにも何人かいましたが、いつの間にか消えていきました」という話も、そっと耳打ちされました。まだまだ過渡期ということなのでしょう。まあ、価値観はそれぞれなので、ここは深く掘り下げないことにして。

 イマドキという言葉は好きではありませんが、いわゆる「イマドキの若者は……」とレッテルを貼られるケースは、「ゆとり世代だから使えない」とか「常識がなくて困る」とか「口ばかり達者で身体が動かない」とか、ネガティブなワードとセットになることが多いです。しかし当然、そうではない人もいる、という当たり前の話。そしてネガティブなレッテルを貼られない極めて優秀なイマドキの若手が、40歳前半くらいまでの中間管理職と上手くいかない、ことが多い。

●「現場が機能不全になることもあるようで、心配です」とある管理職

 いったい、どんなことが起きているのか。ある仕事を例に説明してみましょう。プロジェクトチームが結成されて、新しいプロダクトを期間内に開発しなければならなくなりました。抜擢されたのは3年目の若手。お目付役として10年目の中堅と、プロジェクトをまとめる中間管理職。厳選されたメンバー、小さなチームで素早く、そして、画期的な製品を生み出そうとするのは、それこそイマドキの流行です。若手もいつもの仕事とは、張り切り方が違います。

 製品開発、ベンチャー企業、フレームワーク、ありとあらゆるジャンルの書籍を求め、新しいサービスをリリースしたいと考えている企業がプレゼンテーションをする場所があれば積極的に情報収集をして、さらに多くのデータを入手して徹底的に分析。それこそ、寝食を忘れて仕事に没頭する勢いです。

 プロジェクトをまとめる中間管理職は他の仕事と兼務ですから、時折受ける報告も、言い方は悪いのですが“流して”聞きがち。報告を受ける側の態度に真剣味がないことに気づき、若手も報告する回数が徐々に減ってきます。

 お目付役だった中堅社員が機能すれば良いのですが、これまた別の業務と兼務している状態で、細かく見ることができない。前のめりになって仕事に取り組んでいる若手をフォローするのは、意外に労力が必要ですから。仕事はたくさんあるのに、人がいなくてすべてが上手く回らない、という典型的な状態。このコラムの読者の職場にもありがちな光景でしょう。

 そのうち、一定の成果を報告して、製品の開発の方向性を経営陣に示す期日が迫ってきたことに気がついた中間管理職は、あわててミーティングを設定。若手から報告を受けます。

 いままで進捗を報告し、生返事とはいえ「いいと思うよ。とりあえず進めておいて」といわれて、安心して進めていた若手は、データを分析し、自分なりに考えた新しいアイデアを、提案します。そこで中間管理職から思わぬ一言を叩き付けられるのです。

 「うーん、この体裁では経営陣に報告できない」

 まずはアイデアの画期性、収益性、事業への貢献度合いなど、チェックするべきポイントはたくさんあるはずですが、中間管理職はそこではなく、社内のルールにこだわります。もちろんそれが重要なのは理解できますが、若手は納得しません。そもそも進捗を報告し、確認してから取り組んだ仕事にもかかわらず、ギリギリのタイミング、リカバリーができるかどうか、というところにきて「違う」と言われてしまったのです。

●使えない若手を生み出している人は、あなたかもしれない

 ここまで読んで、ベテラン(=こういう表現が適切かどうかは議論の余地がありますが)ビジネスパーソンの中からは「いや、周囲にもっとキチンと聞くべきだろう。本で勉強したり、社外の人と会ってやり取りしたりして、頭でっかちになっているタイプ。よくいるよね、使えないヤツ」という声が聞こえてきそうです。が、本当にそこが問題だったのでしょうか。

 ここで問題だったのは、中間管理職には、何度も指導をするチャンスがあったにもかかわらず、それをしなかったことでしょう。生返事で「いいと思うから進めて、適当に」という言葉が、結果として「使えない若手」を産んでしまうという、なんだかモヤッとする話です。

 さらに、こういう例はどうでしょう。売り上げをアップすることを至上命題とされる部署。3年目の若手にも大きな数字が与えられます。いろいろと手を尽くすのですが、なかなか成績が思うように伸びません。上司である中間管理職から呼びだされて、状況を聞かれた上で、叱咤されます。

上司: 「どうして売り上げが伸びないのだ」

若手: 「頑張っているのですが、なかなか思うように数字が上がらなくて」

上司: 「もっとしっかりと考えて営業しないからだろう!」

若手: 「いろいろと考えているのですが……。どうしたらいいでしょう?」

上司: 「それを考えるのが、お前の仕事だろう。ちゃんとやれ!」

 似たような光景を目にしたことがない、という人はいないかもしれません(もしいたら、それは恵まれたビジネスの現場にいる幸運を喜ぶべきです)。これにしても、上司が上司の仕事をまったくしていない。

●自分で考えろ、という言葉はとても便利。使い方にご注意を!

 先に挙げた製品開発の例も、一定の年齢よりも上の上司世代からは「自分の頭で少しでも考えたら、確認はしっかり取ることが重要だと分かりそうなものだけど」という、身もフタもない反応が返ってきそうです。自分なりに考えて努力しているけれども、営業成績が上がらないことを悩んでいる若手にも「それを考えるのがお前の仕事だ」と、投げ捨ててしまうことも上司としてアリだと勘違いしているケースは少なくない。

 そして、自分で考えろというフレーズは「育成」という言葉にひもづいてきます。自分もそういう感じで育てられた。これは育成の一環なのだと。これはとても怖い。単純に仕事のやり方がまずいだけなのにもかかわらず、自分で考えろという伝家の宝刀が、育成という言葉と結びつくだけで、良いことをしている状態になってしまうのです。これでは、優秀で使えるはずだったイマドキの若手も腐ってしまう、使えないヤツになること、請け合いです。

 冒頭の部長たちは「自分で考えろというスタイルの指導は、もう古いのでしょうか」という話の流れになりました。当然、問題はそこではないことを、皆さんはお気づきですよね?

FX初心者トレーダーの為の為替予想まとめ
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