甘いシュガーロール。
彼女はまだ一口も手をつけずにいる。
「私、これ好きなんだよね。」
朝は誰よりも早く起きて綺麗な顔をする。
そんな彼女が赤い目をしてうさぎみたいに笑った。
僕は返事もせずに、しゅんしゅんと音をたてるポットを穴が空くほど見つめている。
甘い甘いシュガーロール。
僕が一口かじると、ポロリと雫がこぼれてしまった。
もう元には戻らない気がして、新聞で顔を隠した。
うっすらと聞こえる嗚咽はポットに掻き消されて、気付かないふりをするのは容易い事だった。
甘すぎるシュガーロール。
彼女はまだ一口も手をつけずにいる。