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適量を汲み入れる器加減


例えば、ハート型の透明な硝子製の器がある

その中身は液体で、車で言うところのガソリンみたいなモノだ

生きて動くには必要不可欠だけど、自給自足は出来ないから、誰かから分けて貰わなくちゃいけない


そんな感じ



両手に持った器にはまだ半分より上に液体が詰まってる

そこに颯刃がやって来て彼の器から俺の器に液体を注ぎ入れだす

笑顔で止めどなく、やけに綺麗な器からソレを注ぐ


「もう良いよ、沢山だ」


そう言っても止めてくれないから、
やがて器の上限を越えて両手を濡らし液体は床に滴る


「はい!一杯になったよ」


そこでやっと颯刃は器を離して走り去る
また、俺に注ぐ為の液体を探しに


残された俺の手の内にある器は、案の定重量オーバー

少し動けばまた溢れそうで動けない
数滴の滴が足元に落ちる


(どうしようか?)


目一杯の友好に不純物は一切無くて、
ただひたすらに好意だけだ

捨ててしまえば多分傷付く
上手く消費しなければ動けなくなるだけ

立ち尽くす俺の器が不意に揺れた
ドボドボと中身が床に撒き散らされる


「何するんだよ!?」


隣を見れば、俺の手首を掴んだ漣が手が滑った、なんて悪びれず言う

文句を言う俺をろくに見もしないで、床に撒かれた液体を拭き取る

綺麗になった足元、立ち上がった彼と視線が合う


「これで少しは動けんだろ?」


ニヤリ、と笑った声につられて手元を見れば上限には余裕が生まれていた

軽い、でもしっかりとした重さを保つ器
これなら動いたって溢れ無いだろう


(でも、撒き散らすぐらいなら誰かにあげた方が良かったのに)


視線を動かせば漣の器が目に入る
傷だらけ、中でも半分より少し下の位置には液体が漏れてしまいそうなヒビまで入ってる

少ない液体量を見て、省エネなんだと彼が笑う

2、3度背中を叩くと漣は歩き去った


皆の器に液体が詰まってる
でも、器も液体量もバラバラだ


上手くバランス保ってよ
そうしたら快適に動いて居られるから


抱え直した器を持って歩きだす
俺の液体をまた誰かに注ぐ為に……







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