昼下がり、公園の桜が咲き誇る。
新緑の草に腰を下ろした。
少し間を開けて、彼女も芝生に座る。
桜は見頃を過ぎてしまって、風に花びらを靡かせつつあった。
「ふぁ……あぁあ……」
「……寝不足……?」
陽気に浸って居たら、盛大に欠伸が出てしまい、鳴狐が少し心配そうに俺を見つめる。
「いや、春って温かくて眠くなるんだよ」
正直、学園のミッションも度重なってたりしてゆっくりするのも久し振りだった。
でも、それは心配性の仲間に言うべき事でも無いだろう。
「……颯刃にとってはいつも、じゃ無いかしら……?」
冗談混じりの本心を言えば、安心したのか彼女からも軽口が返って来る。
「あはは、そうかも」
「……ふふっ……」
おどけて笑って見せれば、鳴狐も静かに笑った。
「…………」
「?」
他愛ない仕草に、目が惹かれる。
少しの間黙った俺に、不思議そうな視線。
「や、綺麗だなぁ……って」
「……そうね……」
思ったままの言葉が零れた、がーー
鳴狐は絶えず舞い散る花弁に手を翳し、同意をする。
桜吹雪の事だ。そう思ったのだろう。
「うん」
微笑を浮かべて頷く、否定する理由も無いし。
ほっ、とした瞬間に再び欠伸が出てしまう。
「……少し眠る……?」
見かねたのか、そんな言葉を掛けられる。
少し勿体無い気分になったが、どうにも抗い難い。
「……うん」
幹に背を預け、素直に好意を受け取る事にした。
折角、気分転換に誘ったのになぁ……
「……颯刃……」
微睡みかけた中で、静かに名前を呼ばれる。
「……ん〜?」
「…………お休みなさい……」
優しい声が聴こえたのを認識して、目を閉じた。
ほんの少しだけ眠ったら、今度は彼女の好きな事に付き合おう。
そう自分に誓って、意識は春日に溶け込んでいった。