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しとどさめざめ雨はふる


仰向けで寝そべる彼奴が居た。

靴音がぱしゃり、雨が溜まった水を弾く。


「なぁ」


その、薄く開いた茶色の瞳から流れるソレは、
パラパラと絶えず散る水の流れなんだろう?


「意味が解ん無ぇよ」


視界に入ってないのも、
意識に入ってないのも、解ってるけど。


止まない雨は降り続く。
寒いけど、雨宿りする気にはなれなかった。


灰色、薄水、無色透明。
解らないモノだ。



「なぁ」



返事は無い。



「俺な」



動きは無い。



「……。そこ、濡れ無ぇ?」



反応は無い。




溜息一つ、吐いて消えた。


鳥籠。海面の揺らぎ。煌めく水滴。
さようなら、また明日。



「無視かよ……本当良い性格だな」



キラーチューン、響くノイズ入り。
うなりうねり上げ下げ。



「嫌いだ」



結構な解答。
杜撰な問答。



「嫌いだ」



朝の白い月、静寂のコンクリート。
空っぽの胃袋と熱い喉。



「……」



知ってるか?
我儘な彼奴の好きなこと。


暗い水底、白いカップ、苦いお菓子と、甘い無関心。
プリズムの壁と夜明けの気配。
彼女の面影。



「知ってるか?」



俺が好きなこと。
俺は知らないけど。


濡れた前髪から、雫が落ちる。



誰かが言ってたのか、
はたまた何かで目にしたのか忘れたけどさ。

思い出した、文字列。



『貴方がソレを愛して居るならば、
ソレを自由にしなさい』




「別にそれでも良く無ぇか?」



最初から掴んでいたら気付けないんだしさ。
放したって間違って無いじゃんか。


右手の人差し指、向けて。
口を開いて息を吐き出す。



「好きだって、良いんじゃ無ぇの?」



絡む視線、数秒。
雨は激しさを増した。


踵を返して歩き出す。
一歩、一歩。


どうでも良いか。
どうでも良いや。


早く帰って眠ろうか。
貼り付く衣服の不快感。


「あ」


思い出した文字列。



『もしもソレが戻って来たら、
ソレを放さないで愛してあげなさい』



「ま、良いか」


振り返らないし、関係無いから。


歌にならない音の、そんな世迷い言の話。






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