Festina lente.

消灯したけれど、吐き気で眠れない。

例えばもし今、あの人を手に入れられたとしよう。
きっと今よりは幾分かマシな生活になるかもしれないし、毎日が少しは楽しみになるかもしれない。
指先が触れただけで心にポッとあたたかいものが灯ったり、抱き締めてもらえただけで安心ができるのかもしれない。
だけど、死ぬことを諦められるか。
答えは否。
きっとチャンスがあれば、きっかけがあれば、彼を置いて私は死ぬんだと思う。
結局はこれだ。
いつもこの自分の最も奥深くに閉じ込めてある欲望が頭を擡げるから、私は考えるのをやめる。
今夜も、
彼が優しくて、弱ってる人を放っておけないと知っていて、わざと弱音を吐く。

昨日から入院している。
清潔だけれどどこか人を寄せ付けない、そんな消毒の匂いに囲まれている。
不意にある人のことを思い出した。
今の私と同じ場所に点滴をしていた人のことを。
寂しさに押し潰されそうになってボロボロになってしまった人。
彼は元気にしているだろうか。
罪悪感で潰れかけの私がふと思い浮かべる唯一の人。

弱っている時に散々優しくされると駄目だ。
ちゃんと距離を保てるもんだと思ってたけど、どうやら近づきすぎたみたい。失敗した。
毎日弱音吐いても決して見捨てないでいてくれるのを、自分でも何と無くわかってたからなるべく距離を置いていたのに。踏み込みすぎた。もう寄りかかる一方だ。どうしようもない馬鹿だ私は。
本当に救いようのない馬鹿だ。
万に一つの可能性もないのに。

しんどい。
先延ばしにして嘘ついて。それでまた先延ばし。
結局は自分で自分の首を絞めているってことになぜ私はいつも気付かないんだろう。
馬鹿だ。本当に馬鹿。
毎日毎日気が休まらない。死んでしまえばもうこんな思いせずに済むと考えると、
その誘惑に抗えるのはあとどのくらいだろう。

心身共にボロボロ。コントロールできない。
昨日から猛烈な吐き気に苛まれて、何も口にできない。喉から胃にかけて痙攣している感じ。息ひとつするのにも震える。
苦しい逃げたいしんどい辛い
あとどれだけ吐き出せば楽になれるんだろう。一体どうやったらこの状況を変えられるんだろう。
もはや涙も出ない。
このまま目覚めなければいいのにと、そんな馬鹿なことを考えるのも飽きたわ。