新しい武器・恒暁(こうぎょう)を手に、廃ビルに出現した怪人をひたすら倒す晴斗・時任・桐谷の3人。


4階の戦闘員も全て倒し、メギドがいそうな5階へと晴斗と時任は足を踏み入れる。

「あれ、全然敵の気配がない…」
「罠だったらどうするんですか!?」

晴斗は焦りを見せたが時任はマイペース。
「ならその罠をぶっ壊すまでだな」


5階をくまなく探したが、戦闘員すらもいなかった。そして最上階へ。

最上階は雰囲気がガラリと変わる。いきなり敵から不意討ちを受けた。
何か羽のような矢のようなものが飛んできたのだ。時任は素早い身のこなしでメギドに接近を試みるが、敵は羽を矢のようにして飛ばすらしい。

晴斗は恒暁を使い、がむしゃらに突進しながら敵の羽を蹴散らす。
時任は驚いていた。なんてむちゃくちゃなやつなの!?

晴斗はようやくメギドと対峙。敵は猛禽類のような羽を持ったメギド。
時任はワイヤーを展開、メギドの動きを止めようとする。

「こいつが飛んだらさらに被害が広がっちゃう!」
「時任さん!」
「暁くんはその刀で攻撃するんだ。私はこいつを食い止める。ワイヤーは動きを止めることも出来るからさ」

晴斗は必死にメギドを食い止める時任を横目にしながら恒暁で攻撃を続ける。そこへ来たのは桐谷。
桐谷の手にはライフル銃。

「時任さん、話は聞きました。晴斗くんに見せ場を与えてあげましょう」
「そだね」

時任はワイヤーを思いっきり、引いた!メギドに絡んだワイヤーが切り刻むが、戦闘員とは違うためにダメージは浅い。そこに桐谷がライフル銃で確実に撃っていくが、羽の矢に阻まれる。

くっそ!


晴斗は刀で闇雲だが矢を叩き切っている。時任の攻撃で飛べなくなったメギドは力ずくで晴斗を攻撃するが、晴斗は持ち前の運動神経でギリギリ交わす。


時任は再びワイヤーを展開。今度はフロアの一角にワイヤーを張り巡らす。時任は晴斗にワイヤーに触るなよと知らせてある。
晴斗は縛りプレイでメギドと交戦中。これがなかなかキツい。時任は時任なりに援護。

「暁くん、出来るだけメギドをこっちに引き寄せて!」
「了解!」

晴斗はジリジリとメギドをワイヤーを張り巡らしていたエリアへと追い詰めていく。
時任はニヤッとした。

ワイヤーが一斉にメギドを再び切り裂いたのだ。2回目のワイヤー攻撃でメギドはダメージを受けている。


晴斗は恒暁のトリガーを引いた。ブォンという音と共に刃が光る。発動状態になったんだ。
晴斗は必殺技を意識し、ここぞとばかりに刀を構え決めた。恒暁は光の軌跡を描き、直後衝撃波が発生。

発動の衝撃波はメギドを包んだ。時任と晴斗により、羽の矢を使うメギドは爆散した。


この音は廃ビルの外にも響いていた。
たまたま近くを通りかかった休日の御堂は「おー、怪人とドンパチしてらぁ」という感じで冷めていた。



ゼルフェノア本部・司令室。宇崎は晴斗のおニュー武器である日本刀型ブレード・恒暁のデータが取れてニヤニヤしている。
「発動状態もデータ取れたし、晴斗は成長目覚ましいな〜。戦闘で成長するタイプだったとはな」



今回の戦闘により、晴斗は時任と桐谷とも打ち解けることが出来た。
時任はフレンドリーすぎるが、そういう人なんだろう。たまに馴れ馴れしいけど。


時任が自分と同じようなタイプだったとは。俺も正直名乗りやりたい!
…しかし、時任の「絃(いと)使いのイチカ」って何?二つ名?名乗りたいだけ?

桐谷さんはロケット砲ぶっ放すわ、マシンガンやライフル銃でガンガン攻撃するわでのほほんとしたイメージと違いすぎる…。



そんな癖の強い面子と一緒の廃ビルでの戦闘の翌日。


鼎は晴斗をある部屋へと呼び出した。あの教室のような折り畳み式机とパイプ椅子の、あの部屋に。

俺と鼎さんが顔合わせした、例の質素な部屋だ。


晴斗は恐る恐る扉をノックする。「どうぞ」鼎の声がした。扉を開け、中に入るがなぜか少し薄暗い。
晴斗は電気を点けようとする。鼎はすかさず制止した。

「電気は点けるな。このままで話をしたい」


鼎はパイプ椅子に座っていた。晴斗も恐る恐る座る。互いに対面する形になった。2人の間には折り畳み式机が2つある。


鼎は開口一番、こう言った。
「覚悟は…出来たんだろうな?お前が知りたいことをこれから話そうと思う」

晴斗は緊張し、生唾を飲む。なんなんだ、このピリピリした空気は…。


晴斗は鼎の圧に押されかけていた。鼎さんは人前では常に仮面姿だが部屋が少し薄暗いせいか、怖さが増している。


鼎は淡々と話始めた。


「晴斗、お前は12年前の連続放火事件…覚えてるか?犯人の怪人がまだ見つかっていない未解決事件だよ」
「連続放火事件?」
「その中に唯一犠牲者が出た放火事件があったんだ。…都筑家だ…」

都筑家放火事件と鼎さん、何か関係してるの?


「晴斗、お前は都筑家は『全員』犠牲になったと知らされたはずだ。…だが…実は1人だけ生存者がいたんだよ…」
「生存者!?初めて聞いたよ。でも悠真姉ちゃん達は死んだんじゃ…」

「その生存者は事件のほとぼりが冷めるまで、組織の施設に匿われていたから知るはずもない。ましてやその生存者は……」

鼎は声を詰まらせる。なんとか自分を落ち着かせ、話を続けた。


「その生存者は全身火傷を負い、かろうじて生きていたんだよ。顔に大火傷を負ってな…」
晴斗は鼎を見た。鼎はかなり辛そうに話してる。

「組織はその生存者を守るために匿った。そしてその生存者は名前を変えて生きている」


晴斗は信じられないような反応を見せた。

「まさか鼎さん…悠真姉ちゃん…なの?生きてたの…?」
「だとしたら信じるか?」
「その仮面の理由って…顔の大火傷の跡を隠すためなの…」


晴斗は信じられずにいる。


目の前にいる、仮面の女が悠真姉ちゃんだったなんて…嘘だろ!?
話し方が冷淡なのでわかるはずもないし、仮面で顔が隠れているからそりゃあ正体なんてわからない。


晴斗は衝撃的な事実にショックを受けていた。

「鼎さん…嘘だろ!?なんで…」

鼎は無言。そして手を頭の後ろに回し、何かやっている。よく見ると仮面の紐をほどいていた。

「まだ信じられないようだな…。これでもか?」

鼎は仮面をそっと外す。あえて部屋の電気を点けていなかったのは、俺に素顔を見せるため…。


薄暗いのと角度の関係で鼎の素顔ははっきりとは見えない。晴斗は鼎の素顔を見て、ようやく鼎さんが悠真だという事実を受け入れようとする。
悠真姉ちゃんが鼎さん…。


悠真姉ちゃんは生きていた…。


鼎は淡々と手慣れた様子で仮面を着けていた。
「電気着けてもいいよ」

晴斗は部屋の電気を点ける。そこには見慣れた鼎の姿が。


「私からしたら仮面は身体の一部だ。これなしでは目に負荷がかかってしまう」

「全身火傷ってそんなにもひどかったの…?」
「重傷レベルだったからな。生きてることが奇跡だと言われたよ」
「なんで組織の施設に…」
「それは後々話す。私が生存している事実は公には出ていない。『都筑悠真は死んだ』ことになっているからな。…私も悠真はあの事件で死んだと認識している、今いるこの私は『紀柳院鼎』だ」


鼎さんと悠真姉ちゃんは同一人物なのに、別人扱いしてるのには何かわけがあるんだろうか…。
それに「悠真は死んだ」って…。



晴斗は部屋を出た。かなりショックを受けている。
頭がショックと混乱でごちゃごちゃしてる。整理がつかない。

悠真姉ちゃんが生きていた!?
でも火傷であんな変わり果てた姿になっていたなんて…。嘘だろ!?
仮面なしの生活なんて送れないみたいなことを鼎さんは言っていた…。仮面は身体の一部…。



一方の鼎も複雑だった。
晴斗に事実を伝えたが、これで良かったのだろうか…。関係が壊れそうで不安だ…。
事件後退院してから、組織の施設に匿われていたことも事実だが。

鼎はしばらく部屋から出られない状態になる。精神的に来たようだ。
あの事件のことは思い出したくないのに。時々フラッシュバックする…。


彩音は部屋で放心状態になってる鼎を見た。

「鼎、やっぱりここにいたか…。晴斗くんに『あのこと』…言ったんだね…」
「これで良かったのかわからないんだ…」

「晴斗くん、かなりショックを受けてるみたいだった。そっとするしかないよ…。本当はまだ受け入れられないかもしれないよ……」
「…わかってる……」


彩音は鼎を優しく抱きしめた。

「今までずっと抱え込んでいたんだよね。よく頑張りました。えらいえらい。鼎…本当は辛いし苦しいんでしょう。泣いてもいいよ。泣けばスッキリするからさ」
「彩音…」

鼎の声は震えていた。そして堰を切ったかのように泣いた。
彩音はまるで子供をあやすようにして鼎を見守る。


これじゃあ私、保護者だなぁ。あの時からそんな感じだったからまぁ…。