解析班の朝倉と矢神は幹部クラスの怪人・飛焔による放火5件目を食い止めるべく、その日は本部に泊まることに。
放火事件は12年前の再来に近づいているだけに、朝倉は気が気じゃなかった。

朝倉と矢神は被害状況と防犯カメラから分析し、飛焔の放火は今のところ「全て」赤い炎を使ったとみた。次に来るとすれば蒼い炎かもしれないと。


12年前の一連の放火事件も5件目から蒼い炎が目撃されているが、蒼い炎はほんの数瞬でその後赤い炎になっていた。その線が濃厚。



本部・解析班の部屋。時間帯は夜。解析班は朝倉と矢神だけ。他の隊員は帰ったはず…だったが神が姿を見せる。

「神さん、帰ったんじゃなかったの!?」
朝倉はびっくりしてる。神は淡々と答えた。
「一旦帰ったけど、また来た。これ以上被害を広げるわけにはいかないだろ。5件目が起きそうな場所はだいたい目星がついてる。あとは具体的にどこか絞りこむだけだ」
「そこまで分析していたの…!」


神は自分の席につくと、PCを起動→分析していたデータを朝倉と矢神に見せる。

「飛焔はこだわりがあるのか、この区域だけに放火してるんだ。12年前は小屋のボヤから始まり都筑家で終わってる。8件目では犠牲者も出た。12年前とは違うエリアだが全て同じ区域で起きてるだろ?
今回は資材置場のボヤから始まり、ターゲットが大きい。3件目で既にビルがターゲットになっているからね。奴のこだわりは推測だが、そろそろ犠牲者を出そうと目論んでるかもな」

朝倉はPCに送られてきた飛焔人間態と怪人態の画像を見る。
「この長髪の男がね〜。姿なっかなか見せないから、被害を防げてないのが悔しいわ!」
「だから俺も今日は泊まるよ、本部に」
「神さん神か!?ありがとー!」

朝倉は喜んだ。神は感情に起伏があまりない男だが、本当は飛焔の所業に許せないでいる。幹部となるとヤバいからだ。強さのレベルも違う。



数時間後・深夜近く。宇崎は解析班の部屋にまだ灯りがついているのを見た。
朝倉達は泊まりなのか…。あいつらもプライド高いからねぇ。俺は一旦寝るか…。

その解析班の部屋では朝倉と矢神が自分の席で疲れたのか、眠っていた。神は優しく毛布をかけてあげている。神は朝倉のPC画面をチラ見。

朝倉…分析かなり進んでるな。…ん?このビルに印がついている…俺と読みは同じか…。


矢神はぐっすり熟睡していた。こちらもかなり分析が進んでいた。
あーもう、仮眠スペースで寝なってば。でも矢神も相当頑張ってるから、毛布かけたげよう。

神は時折仲間に優しさを見せる。神は寝ている2人を見守りつつ、1人で夜通し作業を進めていた。



翌日。朝倉と矢神は目を覚ました。知らない間に毛布がかけられている…。
2人は仮眠スペースを見た。神は寝袋ですやすやと眠っていた。

朝倉は机の上に神からのメモを見た。
『俺のPCに解析結果が出てるからデータは好きに使ってね。 俺は寝るからしばらく起こすなよ。 神』


朝倉は神のPCを見る。そこにはかなり具体的な解析結果が。神さん夜通しやったんだ…。
そこには飛焔の行動範囲・行動パターン・放火エリアの共通点など出ている。さらには飛焔の性格はこうなんじゃないか?…という推測まで。

解析班は警察零課と頻繁にやり取りしてるため、放火犯の心理とはどんなものかも一応聞いていた。それが怪人にも当てはまるかはわからないが。


朝倉は神のデータを使い、資料を作成。そして司令室へ。5件目はなにがなんでも食い止めたい…!



朝の司令室はやけに静かだった。それもそうだ。宇崎は寝ていたのだから。
「司令!解析結果出ました!…あれ?司令がいない…。資料置いておきますね。隊員は待機させた方がいいと思いますよ。警察は最小限で」

朝倉は司令室に監視カメラがついてることを知ってて、こんなことをカメラを向かって言う。司令、見てるんだろ?…的な。



それから数時間後。とある区域の某オフィスビル。
そこには御堂と警察零課が数人待機してる。御堂は宇崎と通信。警察は覆面パトカー・私服で来ていた。御堂は敵に悟られないように覆面パトカーの中で通信中。

「室長、解析班を信じてそのビルに警察と一緒に待機してるが解析班の指示通り、警察は最小限だ。隊員俺しかいないけど、来るんだろうな!?」
「和希、安心しろ。今から桐谷達が合流する。晴斗も一緒だぞ」
「鼎は来るわけ…ないか。あいつ、火にトラウマあるからな」


――少しの間。

「鼎は条件つきなら大丈夫だよ。相手は火を使うから『組織車両から降りるなよ』と伝えてあるからね」
「鼎のやつ、その犯人の怪人倒したいとか思っていそうだな…。相手は幹部クラスだってのによ」



異空間・元老院の本拠地。

黒いローブにフードを目深に被った、白い仮面姿の元老院の元締め2人は飛焔と杞亜羅を呼び出す。


「なんでしょうか、鳶旺(えんおう)様」
鳶旺と呼ばれた中高年らしき男は元老院の長。いわば、長官みたいな元老院のトップ。

「今回は杞亜羅と共に実行せよ」
「それで私も呼ばれたのですね」

元老院の若い男性…副官の絲庵(しあん)が長に付け加える。
「飛焔、蒼炎を使うのですよ」
「承知した」


2人は姿を消した。



某オフィスビル。飛焔と杞亜羅の2人は怪人態へと変貌する。


その頃、桐谷が運転する組織車両は御堂に合流しようとしていた。
車両には晴斗・彩音・時任・桐谷そして鼎。桐谷は運転手として来ているが、一応装備は積んでいる。


「鼎さん、なんで今回同行してるの?火…トラウマなんじゃ…」
晴斗はハラハラしてる。

「私は…奴の顔を見たいだけだ…。許せないんだよ…私の全てを奪ったからな…奴は…!」

彩音は鼎を落ち着かせようとする。時任も彼女なりに鼎を落ち着かせてる。
「きりゅさん…落ち着こうよ…。きりゅさんは車から降りなければ大丈夫だから。あやねえも付いてる。あたし達でそいつを止めるから!」
「…時任…ありがとね」

鼎の声が優しくなった。


やがて件のオフィスビルへと到着。晴斗達は御堂と合流する。車から降りたのは晴斗・時任・桐谷のみ。
鼎と彩音は車に残ってる…というか待機状態。


「鼎のやつ、結局来たのかよ…」
御堂はめんどくさそうな言い方をしてる。

「御堂さん、鼎さん…火にトラウマあるのにどうしてもって来たんだよ…。気になっていたみたいで…」
「鼎からしたら全てを奪った怪人は倒したいはずだが、相手が悪すぎる。幹部クラスな上に炎を使うからな」


組織車両内。鼎は突如、激しい頭痛に見舞われる。

「大丈夫!?」
「またあの頭痛だ…。奴が炎を使う前触れ…」


彩音は御堂達に通信。
「早くビルの中に入って!鼎が激しい頭痛起こしてるの!飛焔はこの中にいるみたい」
「鼎のあの頭痛は飛焔とリンクしてるんだっけ…」


ゼルフェノア隊員4人と零課3人は怪人探しをする。ビルは10階建て。

それぞれ散り散りになり、通信しながら探す。御堂は焦っていた。
あの時点で鼎が激しい頭痛がしたということは敵は既に怪人態になっている…!


晴斗は持ち前の運動神経を生かして次々と探していた。

「どこにいるんだ!出てこいよ!」

反応なんてあるはずもなく。晴斗はいきなり脳内に何者かに声を掛けられた気がした。


《早く探さないとこのビルは火の海よ》


女の声…?犯人の怪人は男のはず。どうなっているんだ!?


《邪魔はさせない。見つけられるかなぁ?》

今度は男の声。脳内に直接語りかけてくる…!ごちゃごちゃしてうっせぇ!



ビルの7階のとある場所。飛焔は蒼い炎を手から出した。
杞亜羅は周囲を見渡す。
「敵はいないようね」

飛焔は怪しげな蒼い炎をメラメラと燃やし始める。
「蒼炎は赤い炎よりも美しいとは思わないかい?」
「貴方にはこだわりがあるのね。それが貴方の美学なの?」

「…俺は炎が美しくて好きなだけさ」
「12年前のあれじゃあ満足出来なかったのね」



たまたま7階にいた御堂は火の手に気づく。奴がいたっ!
飛焔は気づかれたか…というような反応。だが杞亜羅が立ちはだかる。


「飛焔の邪魔はさせないわよ」
なんだこの女!?怪人態ということは…幹部はまだいたのかよ!?

御堂は銃撃するが、杞亜羅は扇子で全て攻撃を弾いてしまう。
銃が効いてない…!このままだとビルの火は大きくなってしまう…!


そこに消火器を抱えた晴斗がやってきた。
「御堂さん!」

晴斗はすぐさま消火器で火を消しにかかるが、蒼い炎は火力が強いためになかなか消えない。怪人由来の炎は消えにくいとは聞いたが、ほとんど効いてねぇじゃんか!


桐谷と時任も到着。桐谷は何やら大きな銃を構える。見たことのないデザインの大型銃だった。
「晴斗さんと時任さんは怪人を頼みますね。私(わたくし)はこの銃で消火を試みます」

消火用の銃なんてあるのかよ!?
桐谷はお構い無しに銃撃。水鉄砲のように何か液体が発射された。威力もある。

御堂は察した。特殊な薬剤を使った消火銃か…。



杞亜羅は扇子で御堂に一方的に攻撃している。

「お前、何者だ!」
「私?杞亜羅(きあら)と言うの。元老院の命で彼(飛焔)についてきたの」


元老院!?


御堂の攻撃は杞亜羅とは相性が悪すぎた。晴斗は割り込もうとする。
「晴斗!お前は飛焔を攻撃しろ!時任は桐谷を援護だ」
「…そう言ってられるのも今だけよ、ゼルフェノアの隊員さん達」


この杞亜羅という女、怪人態だが話し方が妖艶だ。
晴斗は飛焔と戦うが歯が立たない。

幹部って…洗脳された流葵(るき)さん並みか、それ以上じゃん!!
飛焔は炎を自在に操る。蒼い炎と赤い炎、両方使える模様。

「いい感じに燃えてきたねぇ。そんな銃じゃ消えないよ、隊員さん」
飛焔は蒼い炎を赤い炎へと変える。まだビル内部でのことなので、外で待機してる鼎と彩音は気づいていない。



ビルの側、組織車両内。鼎は胸騒ぎしていた。

「鼎、ビルの中に入る気なの!?危ないよ!?…さっきから通信が混線してる…。放火されたんじゃ…」
「さっきからおかしいとは思っていた。まだ頭は痛むが…行くしか…ない…」

「ま、待って。私も行く。鼎をひとりにはしておけないもの」





第14話(下)へ続く。