Ash tree

「あの人はどこへ行ったんですか。」

彼女は半年間、ずーっとこの調子だ

病院のベットに寝たまま、見舞いに来た僕に何度も同じ質問を投げ掛ける

その度に僕は「ここにいますよ。」と答えるが、彼女は虚ろな視線を投げ掛けるだけで、また同じ質問を繰り返す

そして僕は病室の窓をあけ、花瓶の水を入れ換え、彼女の身の回りの世話をする

恋なんてしちゃいけないと思ってた

私には魅力的なとこなんて1つも無いし、他の子よりも全然かわいくない

だから一人前に誰かと付き合うなんて夢のまた夢

あの人も私の事好きかもなんて願望を抱いた日には、すぐに罵声が飛んでくる

調子に乗んなよって



そもそも付き合うってなんなんだろう？

好きって一体なんなんだろう？

2人で買い物行って、一緒に女物とか男物の服とか見て

あれ可愛いとかこれ似合うとか言い合って

それがデート？

そんなの友達とどう違うの？

君が好きとか言っておきながら

結局適当な理由つけて別れを告げるんでしょう？

最初からいつか別れるって解ってるのにどうして付き合うのかなぁ？


彼氏彼女の枠にはめられて

好きでもないのに付き合ったり

わざとらしいのは嫌い



でも何であの人の事を考えるとこんなに胸が苦しいんだろう…

何であの人の事を考えない日が無いんだろう…

何でが来る度あの人からかもと期待してしまうんだろう

何であの人も私の事好きだったらいいなぁって考えてしまうんだろう

ほらまた、　調子に乗んなよって



こんな自分は嫌い

恋する乙女みたいな自分は嫌い

私には一番合わない言葉だから


あの人の事なんて好きじゃない

嫌い、嫌い、嫌い、大嫌い




…でも、ほんとに嫌いなのはそう思い込もうとしてる自分

これを恋って呼ぶのかなぁ…

これを恋って呼べるのかなぁ…

誰か教えて



私の心は壊れそう…

そろそろ愛を返すべきときなんだ

今まで、抱えきれないほどの愛を貰った

でも幼い僕にはその大切さが分からなくて

愛をそそいでくれた人を傷付けてきた

でもその人はこんな僕でも愛しいと言ってくれる

何もない僕なのに、可愛いって、好きだって言ってくれる

その言葉で僕は自分に価値を見い出せる

でも僕はその人に何も返すことができなかった

貰うだけ貰っておいて知らん顔していた

僕の拙い言葉でこの思いを伝えても、与えられた愛の量には程遠い

それだけの愛を君は僕にくれたんだ

君は、心が枯れそうになるまで人を愛そうとする

でも僕は君が枯れるとこは見たくない

だから今度は僕が君に愛をそそぐ

少しずつだけど、時間がかかるけど、いつか、君がくれた愛と同じくらいの愛を君にちゃんと返したいんだ

君が枯れないように