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ハティと侍女と人狼風ゲーム(短い会話文)


ハティと侍女IF
人狼風ゲームのネタバレが含まれるため、追記に記載しています
SSSにも満たない会話文です、メモ程度に思ってください

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2021ハロウィン(ハティ侍女パロディ)


2020年公式ハロウィンイラストから膨らんだパロディです。





 コツン。窓に何かが当たる音がして外を見ると、桟のところに木の実や花が置かれている。部屋に入った時には木の葉一枚も無かったというのに。
 子供たちが森に探検行くと言っていたから、戦利品のおすそ分けをしてくれたのかもしれない。地面に落とさないよう片側の窓を開けて取ろうすると、少し離れた茂みがガサリと揺れる。一瞬だけ見えた、真っ白い毛におおわれた獣の耳に喉の奥がヒュッと音を立てた。
 そこそこ高さのある茂みから見えたということは、大型の可能性が高い。昔見た図鑑の通りならあれは肉食の動物のものだ。
 もしも子供たちが襲われたら。ぶわりと噴き出た汗と早鐘を打つ心臓。いてもたってもいられなくて、近くに置いてあった花瓶を掴んで揺れた草むらに力の限り投げつけた。
 陶器が割れる派手な音がする。けれどそれ以外は、何の気配もしない。
 意を決して窓枠を越えようとしたところで、神父様とおばあさまが駆けつける。事情を話すとこっぴどく叱られたけれど、子供たちは怪我もせずに帰ってきていたから安心した。神父様も村の人たちに話しておくと言ってくれたから、獣ももう近づくことはないだろう。
 ところが。子供たちに誰があれをくれたのか聞いてみると、誰も心当たりがない、とそう言うのだった。気恥しくて嘘をついているのかもしれない。私にもそんな時期があったからよく分かる。
 そんな恥ずかしがり屋さんにお礼がしたくて、もらった木の実で作ったクッキーをハンカチに包む。ありがとう、とメッセージカードを添えて同じように桟に置いた。
 次の日、少しワクワクしながら見てみると、ハンカチは膨らみを保ったままだった。気付かなかったのならばしょうがない。自分で食べようと手を伸ばすと、ずっしりとした重さが手に伝わった。これは、クッキーの重さではない。
 そういえば、メッセージカードも見当たらない。……風で飛ばされたというよりは誰かが持って行った方がしっくりくる、ような。ハンカチの包みを広げてみると、昨日とは違う木の実がたっぷりと詰まっていた。



 またお礼をして、そのまたお礼が届けられて。お互い律儀と言うか、負けず嫌いと言うか。やり取りは途切れることなく続いていて、私の部屋の窓はすっかり秘密の郵便受けになっていた。未だにどの子が私の文通相手なのかは分からないままだけれど。
 今日はハロウィンだから、カボチャを練りこんだパウンドケーキにしてみた。窓を開けて包みを置くと、ふと視線を感じる。
 もしかしてと思って顔をあげると、そこにはあの日に見た獣の耳と……その耳を生やしている褐色肌の少年がいた。
 獣人だ。
 獣人自体は、別に珍しいものじゃない。この村にだって、子供たちの中にだっている。ただ肉食系の、しかも狼族はこの辺りにはいないはずなのに、どうして。
「こんにちは」
 そう言って人懐こそうな笑顔を浮かべた少年は、完全に茂みから姿を現して、一歩、また一歩、ゆっくりと距離を詰めてくる。伸ばされた手には、黒く塗られた鋭い爪が生えていた。
「そんなに怯えないでほしいな」
 思わず目をつむると、指の背で頬を撫でられてぞくりとする。傷つけないように、だろうか。慈しむような手つきがなんだかこそばゆい。瞼を開けると、すぐそこに少年の顔があった。白い虹彩がきれいで思わず見惚れてしまう。
「いつも美味しいお菓子をありがとう」 
「え?」
「本当はずっと、キミに直接言いたかったんだ」
「もしかして、貴方が」
 私がそう尋ねると少年はこくりと頷いた。
「……私の方こそ、木の実やお花をありがとう」
 悪い子ではなさそうだ。こちらからもお礼を言うと少年がはにかむ。可愛らしい姿は子供たちと同じで、警戒していた自分がバカみたいだ。
「でも、どうして私に?」
 プレゼントは嬉しいけれど、理由に心当たりがなかった。こういうことは素直に聞くに限る。
「キミに、ボクの番になってもらいたくて。ストレートに言うと、求愛行動さ」
 呆気にとられた私の手を取ると、見せつけるように指先を食まれた。生暖かい感触にぎょっとして振り払うと、牙に指先が当たってしまって傷ができる。口の端についた血を舐めとって微笑む姿が恐ろしいのに、どうしてか目をそらせない。
「ああごめん。ようやくキミと話せることが嬉しくて、急いてしまったね」
「…………」
「納得できないって顔してる」
「……身に覚えがないもの。狼族にだって、会ったこと」
「昔、罠にかかっていた狼の子供を助けたこと、覚えているかな」
「……あ!」
 この村に来る前のことだ。父と母と暮らしていた、幼い日。
 言われるまで忘れていたけれど、足を怪我した狼の子供をこっそり手当して森に帰したことがある。もしもあの子が獣人だったのならば。……けれど記憶が正しければ、あの子の毛並みは闇を溶かしたような黒だったはず。
「証拠はこれで十分だよね」
 少年が差し出した物には見覚えがあった。包帯代わりに巻いてあげた、一番お気に入りのハンカチ。受けとって広げてみるとうっすらと血の跡が残っていて、隅には母が入れてくれた名前の刺繍。私のものに間違いなかった。
「本当はすぐ会いに来たかったんだ。でも当時のボクはなかなか人型がとれなくて。……それに、やらなきゃいけないことも山ほどあったしね。そうしたらこんなに遅くなっちゃった」
「怪我を手当てしたからって……たった、それだけの理由で?」
「ボクは、運命だと思ってるよ……なんてね。つまり、一目惚れってこと」 
 パチンとウィンクを飛ばされて本心なのか、からかわれているのか分からなくなる。求愛云々はさておき、憎めない人だなと思った。
 もっとちゃんとこの人のことを知りたいと思ってしまうのは、ほだされ始めているからなのかもしれない。
「返事はまだしないでほしいな。とりあえず、ボクとお茶でもしてみない?」
「……分かった。教会の入り口まで回ってもらえる?」
「うん、分かったよ。招いてくれて、ありがとう」
「どういたしまして?」
「そういえば、名乗るのを忘れていたね。ボクはハティ、よろしくね」
 ふふ、と笑った少年の目が一瞬赤く光ったことに、私は気付くことが出来なかった。





********
書き切れなかったことの補足とか設定とか。

・世界観
獣人とか魔女がいるファンタジー。人と共存している種族が多い。
獣人と動物は別であり、獣人は動物を従えている。
獣人は生まれてすぐは獣の姿、だいたい三〜五歳で人型をとれるようになる。

・侍女
とある村の教会に祖母と住んでいる。教会に引き取られた子供たちを可愛がっている。お菓子作りが得意。
本編とは異なり、自分を侍女であれと律することがないため、感情を隠すことが少ない。
ハティを信仰対象としていないこと、年下と思っていることからため口で話す。後々異性としても意識する。(多分)
(書いている感じ、結構性格が違うので本編と設定がよく似た別の夢主として読んだ方が良いかもしれない)

・ハティ
実は死にかけの狼族の少年(スコル)に憑依している悪魔。精神体のため現世で動くには肉体が必要だった。
本編のことを覚えているんだか覚えていないんだか分からないが、侍女に猛アタックを仕掛ける。
本質は悪魔なので、招かれないと家の中に入れなかった。
何も知らない侍女が招き入れてしまったため、今後は勝手にベッドに潜りこんで来たり当たり前のように一緒に生活したりする。
狼族のトップになるのに手間取って時間がかかってしまったらしい。

・スコル
狼族の子供。狩人が仕掛けた罠からかろうじて抜け出したところ、幼い侍女に手当を受け感謝と共にほんのりとした恋心を抱く。
ハンカチを宝物にしていた。
人型をとれるようになるのが遅かったため、群れからは冷遇されていた。
飢え死しそうになったところ、現世で動くための身体を探していたハティと契約した。

・ロバート
教会の神父様。
実は人間に憑依している悪魔。ハティの弟。
侍女に悪い虫が付かないよう、見張りとして送り込まれた。
今ではすっかり神父が板につき、子供たちの教育に力を入れている。

・おばあさま
教会のシスター。勉強や躾にかなり厳しいが、褒める時はちゃんと褒めてくれる。
この世界では侍女とちゃんと家族をしている。

2021ハロウィンSS2本(HANOI)





補助ソフトと塔サイド三人組

「ハロウィン、やるわよ」
 至極真面目な顔で、Wさんがそう言った。私とUさんは一度顔を見合わせて、何事もなかったかのように道具の手入れを再開する。
「ちょっと、無視するなんていい度胸じゃない!」
 ぷりぷりと怒った様子の彼女に、Uさんが舌打ちを一つ。
 あ、逃げた方がよかったかも。そう思った時にはすでに遅く、ちょっと! と鋭い声が鼓膜を刺激する。
「うるッせェンだよォ点滴女!!!」
「アンタの声の方が何倍もうるさいわよ! そもそもアタシの話をちゃんと聞いていれば済んだ話じゃない!!」
 沸点の低いUさんはすぐに火が付いたようで、器用に煙草をくわえたままWさんと口喧嘩を始めてしまった。
 どんどん大きくなっていく声。私は完全に蚊帳の外、二人だけの世界……というには甘さが足りないけれど。今更口をはさんだところで火に油を注ぐだけ。ならば、静かにこの場を去るのがベストだろう。
 気配を消して奥の部屋……シューニャさんのところに避難した。
「お邪魔します」
「補助員さん……!」
 私と目が合うと可愛らしい笑みを浮かべたシューニャさん。今日は体調がいいようで、頬に赤みがさしている。
 その手には、見慣れない服が握られていて……?
「待っていましたよ」
 彼女の背後に目を向けてみると、横になっても余裕がある大きなソファに、カラフルな衣装がこんもりと山になっている。
 瞳を輝かせながら距離を詰めてくるシューニャさんに、私は逃げる場所を間違えたと察したのだった。



清掃員さんと先代女社長

「ん?」
 いつも通り第一の塔に赴いたはず、なんだが。
 蛍光灯が照らしているはずの廊下は薄暗く、一定の間隔で蝋燭が灯されている。働いているはずの社員たちの姿も見えない。転送を失敗したとか、そういった感覚はなかったように思う。
 廊下に自分の足音がこだましては消えていく。
 しばらく歩いてみて分かったことは、第一の塔と構造は同じということ。相変わらず社員の姿は見えないこと。……社長さんも、居ないのか?
 試しにボタンを押すとエレベーターがきちんと動いた。どうやら、電力は生きているらしい。
 七階に着くと蝋燭は一切なく、その代わりに社長室の扉から明かりが漏れている。手すりに手をかけてゆっくりと力を籠めた。細かった光の筋が太くなっていく。
 完全に開けきると、デスクやらパソコンやらの事務用品は一切なく、華美なベッドが中央に一つ。それを囲むように髑髏や薔薇、廊下でも見た蝋燭が飾られている。
 ベッドの上では探していた彼女が、あられもない格好で血のように赤いワインを飲んでいた。
「…………」
「ノックもしないで開けるなんて、いけない子ね」
「…………」
 クスッと笑った顔は一段と妖しさを漂わせている。彼女が立ち上がった拍子に揺れた胸に頭を抱えたくなった。
「なんでまた、そんな恰好を」
「サキュバスの衣装なんですって。今日、ハロウィンだそうよ」
 くるりと回って全身を見せてくれるのはいいが、いやよくないか? 下着同然の格好は彼女の『役目』にはぴったりなのかもしれないが……そう思うと面白くないな。
「それ、自分で用意したのか?」
「まさか。本社の人間よ」
「俺が知っているハロウィンとは大分違う気がするが……社員たちがいないのは演出なのか?」
「半分正解、ってところかしら。本当はサプライズイベントの予定だったの。でもHANOI達には勿体ないって……本社の人間たちだけで楽しむことにしたのよ。監察官たちにはメンテナンス中って通達されているみたいね」
「なるほどな」
 数字たちにも見せまいと皆眠らされている訳か。俺はあくまでタワーの数字だから、その制限には引っかからなった、と。
 一人で納得していると襟首を掴まれて引き寄せられる。少しでも角度を変えればキスできる距離で、赤い唇が囁いた。
「Trick or Treat?」
「……生憎、持ち合わせがないんだ。これで許してくれないか」
 返事を待たずに唇を合わせると、微かに血の味がして眩暈した。

バウムクーヘンエンドは認めない(ハティ侍女)



『もしもハティに身の回りのお世話をする侍女がいたら』シリーズ 青年期3



 大きめのティーポットにカップとソーサーが三組。取り皿とフォークも同数用意されている。
 クリームのドレスをたっぷりとまとったケーキは、クローシュの中でお披露目の時を待っていた。料理長が焼いたケーキはマスターもお気に入りの逸品だ。
 窓から射し込む柔らかな陽の光に気が緩みそうになるが、誘惑に負けてはいけない。カートを押す足取りを少しだけ早くする。
 何事もなく目的の部屋まで運ぶことができた。ノックをする前に軽く身なりを正すと、ひとりでに扉が開く。
 入口にはロバートさまが立っていた。普段より少しラフな格好をしているせいか、その表情も柔らかく見える。
「入りなさい」
「失礼致します」
 道をあけてくれたロバートさまに会釈をひとつ。室内に入ると、マスターは書類とにらめっこをしている最中だった。珍しく、にこやかな笑顔がない。
 邪魔にならないよう端の方で支度を進めながら盗み見ると、手にしていたのは書類ではなく手紙のようだった。
 テーブルの上には十余りの封筒と写真が散らばっていて、私と同い年くらいの女の人が写っている。使用人を増やすのだろうか。それにしては、裕福そうな身なりをしている人が多い。
「用意が出来ましたよ」
 声をかけるのと同時にカップとケーキを置くと、香りにつられたのかマスターが手紙から目を離した。あまり機嫌がよろしくないようで、折り目に合わせて畳んだそれを写真の上に放る。
「マスター」
 ぞんざいな態度を向かいの席から厳しめの声色でたしなめるロバートさまにも同じように出すと、軽めに皮を叩く音がする。自分の隣に座るように、というマスターからのいつもの合図だった。
 けれど、今日はロバートさまもこの部屋に居る。
「本当にご一緒してもよろしいんでしょうか?」
「……たまにはいいでしょう。さ、座りなさい」
 お伺いをたてると、あっさりと許可を出されてしまって逆に緊張する。なんとなくひりついた雰囲気にお暇したかったのだけれど。小さく息を吐いてから自分の分を用意して、言われた通りに腰を下ろした。
「どう思う?」
 落ち着く間もなくマスターに投げかけられた問は、恐らく先程まで読まれていた手紙のことだ。その内容を把握している訳ではない、が。
 手紙に施されていたシーリングワックスのいくつかは、私でも聞いたことがあるくらいには知名度の高い家のものだった。
 降霊の依頼とも考えられるが、写真の女性たちは若く、一瞬でも分かるほどに見目麗しかった。
 この人数が立て続けに亡くなったとは考えずらい。国内でそれほどの事件や事故があったのならば少なからず耳に入っているはずだし、私に意見を聞く必要もないだろう。
 依頼でもなく、使用人候補でもないとするのならば。導き出せる答えは一つしかない。
「そうですね……マスターにとって有益になる家の方が多いのでしょうし、会う機会を設けて気に入った方を選べばよろしいのでは? お部屋の準備はそれからでも間に合うかと」
 ここに招いて生活を共にするのならば尚更、相性は大切だろう。この程度のこと、マスターもロバートさまもすでに考えていただろうから、お力になれているのかは分からないけれど。
 仕える身として、あるいは同じ女性として。どういったふるいにかけるべきかを聞きたかったのかもしれない。
 そう思うとこのティータイムも自然なものに感じられる。納得がいくと急に喉が乾いてきた。
 最近になってようやく適度に息抜きすることを覚えた私は、遠慮なく自分のカップに手を伸ばした。一口含むと慣れ親しんだ香りが口内で広がっていく。
 ふと視線を感じてそちらを見ると、ロバートさまと目が合った。気を抜きすぎてしまっただろうか。マスターより先に手をつけたことを叱られると思って、改めて背筋を伸ばした。
「では、マスターが伴侶を迎えることには賛成だ、と?」
「え? はい、そうですね」
 叱咤ではないことに拍子抜けしてしまうが、一応カップを机に戻しておく。
 マスターを支える人が増えることは喜ばしいことだと思うのだが、ロバートさまの表情は明るくない。マスターの素顔を知るものが増えることのリスクを懸念しているのだろうか。
「全然妬いてくれないなんて、酷いなぁ」
 甘える猫みたいに体を擦り寄せてきたマスターがそう言った。見るときれいな笑顔がそこにある。ただ、いつもと少し雰囲気が違うような気がして心臓が大きく脈打った。
「また……そうやってお戯れを」
「もしボクが妻を迎えたら、添い寝もティータイムもキミと過ごせなくなるね」
 それはそうだろう。奥様を差し置いて旦那様と過ごす侍女なんてあってはならない。そもそも、幼少期の延長で今までずるずると続けている方がおかしいのだ。
 そう思いつつも、やんわりと頬を包む熱を拒めずにいるのは私なのだけれど。
「ボクの隣に居られなくなるのに、いいの?」
「……確かにあの日お側にいたいとお願いしました。ですがそれは、隣ではありません」
 侍女でいいのだと、マスターの目を見てはっきりと告げた。この距離だと普段は白目に溶け込んでいる虹彩がよく見える。
 もうすぐ見納めになるのかと思うと胸の奥がチクリとするが、おばあさまの降霊を……スコルと同じになることを拒んだ私には、隣に立つ資格はない。
 幼い頃にマスターをオベロンさまだと思い込んでしまったせいで、自分が対等な存在になり得るとはどうしても思えなくて。
 マスターに向けている感情自体歪んでいる自覚もあった。恋慕というには異様で、愛情というには独善的なそれは、信仰心に置き換えるくらいがちょうどいい。
「……キミは、ボクが結婚しろと言ったら誰とでも結婚してしまいそうだね。それこそ、年の離れたロビンとだって」
 自分が結婚する、というのはピンと来なかったが、なるほど。正式な学歴のない私では難しいかもしれないが、嫁入りすることができればマスターのお力になれるかもしれない。目から鱗が落ちた気分だ。
「侍女の仕事を許してくださるところがありましたら、是非」
 まだお役にたてる可能性があることがたまらなく嬉しくてそう言うと、マスターの表情が一瞬曇った、ような。
「ロビン」
 私から離れてカップを手に取ると、鋭い声でロバートさまを呼ぶ。湯気のたたなくなった紅茶に口をつけるマスターは、どこか冷静さを欠いているように見えた。
「やっぱりアレはすぐに処分しておいて」
「……そう致しましょう」
 お二人は何かを示し合わせたあと、何事も無かったかのようにティータイムを楽しみ始めた。私だけ、置いてきぼりである。何の話か気にはなるけれど、聞いたところで答えてはくれないのだろう。
 切り替えて私もケーキを頂こうと口を開くと、自分が持ったものとは別のフォークが口の中に侵入した。反射的に口を閉じると刺さっていたものを噛んでしまう。同時に、果物独特の甘さと酸味を舌が感じ取った。これは、ケーキに乗っていたイチゴだ。
「ボクを妬かせた、ご褒美」
 楽しそうに口角をあげたマスターは、フォークを変えることなく次の一口をぱくり。
 状況を理解した私は途端になんの味も分からなくなって、ぬるくなった紅茶で流し込むことでティータイムを終えたのだった。



 後日、暖炉に大量の手紙と男性の写真がくべられたそうなのだが、私が見る前に綺麗に片付けられていたので真相は闇の中である。





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ハティって妬くのかなって半年くらい脳内会議してたけど結局欲が勝った。

清掃員×先代女社長

かなりぬるいですが性描写、またはそれを匂わせる描写が含まれているため閲覧制限をかけています。

パスワードはジャンル問わず全て共通です。

『昭和25年を西暦に直すと何年か』を半角で。
例:令和3年 → 2021年 → 2021

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