ナルミさん、お誕生日おめでとうございます!
(半年越しですが)バースデープレゼントとして小話を…。
遅くなって実にすみません。
転生女体化学パロです。
い組→一組。
ろ組→二組。
竹孫、鉢雷、勘久々前提。
雷蔵と兵助が女体化していて、それぞれ雷春(らいは)と氷華(ひょうか)という名前になっています。
竹孫はボーイズラブです。
↓以下、小話。
クラスマッチに張り切る一組に二組が困惑するお話。
中間テストが終わった次の日は教師の採点期間として中等部と高等部が合同でクラスマッチが開催される。
現在、大川学園高等部体育館では高等部二年一組と高等部二年二組の男子がバスケットコートで試合をしていた。
前半を14対21と7点リードで終えた二年二組の選手達は、休憩中に互いの活躍を称え合い後半に向けて体を休めている。
ネットカーテンの向こう側では同じ組み合わせで女子がバレーボールの試合をしており、一組が僅差で勝ちを収めて全力のガッツポーズをしているところだった。
「三郎〜」
「らぁお疲れ。残念だったな」
「う〜ん、なんか一組怖いくらい気合い入っててね〜」
「お疲れ、雷。こっちは向こうが負けてるから悲壮感が漂っててな。こっちがシュート決める度に選手からベンチから涙浮かべてんだよ」
「ハチお疲れ〜。一組の男子って運動部少ないから毎年クラスマッチとか適当なのに、今年どうしたんだろうね〜」
一組の女子の輪にいる氷華も、彼女にしては珍しいくらい渾身のガッツポーズをしていた。
女子バレーの一組の優勝が決まったからなのか、周りの女子の中にはうっすらと涙を浮かべている者もおり、何が彼女達を…いや、何が一組の生徒をそんなに追い込んでいるのかと二組の生徒は不思議そうに首を傾げている。
審判としての仕事もある三郎が持つタイムテーブルに載っている選手の一覧にも、氷華や勘右衛門を始め過去に付き合いがあった面々が幾つもの競技を掛け持ちでエントリーしているのが記されていて、普段の一組らしからぬ反則に近い本気さが滲み出ていた。
バスケットと同じ時間帯に運動場で行われている男子フットサルは、勘右衛門を含めた全員記憶持ちチームが無双しているらしい。
「あいつら最初は五十音順でメンバー表埋めてきたくせに昨日の締め切りギリギリに出しなおしてきたんだよなー」
「なんだそりゃ、テスト終わって急にやる気になったってことか?」
「えー?どっちかっていうとサッサと負けて教室で勉強してる人達なのにね〜」
『説明しよう!!』
後ろから声をかけられて三人が振り返ると氷華と勘右衛門、そしてその少し後ろに孫兵が立っていた。
「孫兵?どうしたんだ、高等部なんかに来て」
「お疲れ様です、竹谷先輩」
「意味深な登場しやがって…ロケット団か、お前らは」
「するどいな、三郎。ちょっと意識してみたのは否めない」
「勘ちゃんお疲れ様〜、フットサル終わった?」
「お疲れ雷ちゃん、なんとか優勝したよ〜。後半からメンバーチェンジでフットサル組が全員出るからバスケも一組が頂いていくね」
ざわっ、と。
勘右衛門がサラリと言い出した言葉に二組の空気がざわめく。
確かに一組の前半メンバーはペース配分が滅茶苦茶で、三郎と竹谷のコンビプレーを持ってしても突き放した点差をあけることは出来なかった。
それでもバテバテの連中を見る限り後半は楽に試合を展開出来ると踏んでいただけに、二組チームはいきなりの選手交代に驚きの声を上げている。
「おいおい、そんなのルール違反だろ…」
「いや…こいつら全員補欠登録してやがる…」
「はぁ!?」
「選手交代に特に決め事はないしクラスマッチのルール上ではなんの問題もないな、確かに」
「マジかよ!!」
八左ヱ門と三郎のやりとりを後目にユニフォームを前半チームに受け取った一組男子フットサルチームは、もう大丈夫だというように力強くスコアボードを睨んでいた。
10点差以内、というノルマはしっかりと果たされている。
「実は昨日、各学年の一組全クラスに潮江先輩と立花先輩がいらっしゃったんだ。な、伊賀崎?」
「はい、久々知先輩のおっしゃる通りです。中等部の方にもいらっしゃいました」
「なんでもクラスマッチで一組の総合優勝を狙っておられるらしい」
「そのために何をしてでも勝て、とのことでした」
「私達のような一般生徒に、あんなにキラキラした笑顔でタッグを組んだお二人に逆らうなんてことが出来るだろうか。いや!出来る筈がない!勝ち残らなければ生き残れないんだっ…!!」
「今生であれ程の生命の危機を感じたのは初めてです。先輩方は…本気でした…」
氷華と孫兵が顔を伏せて吐露した胸の内を雷春の脳が処理するよりも早く後半開始のホイッスルが響いた。
背の高い八左ヱ門がジャンプ力で競り負けたため一組ボールで後半が始まる。
弾かれたボールをキャッチした一組の選手が、ブンッ−と空気の音を鳴らしてゴール付近に向かって投げた。
パスなんて生易しいものではない。
風圧だけで体がよろけそうなボールに二組のメンバーは完全に虚を突かれ、ジャンプボールに出ていた八左ヱ門は勿論ボールの軌道の近くにいた三郎でさえ一切手がでなかった。
ガシンッ、と。
気付けばそのままダンクが決められ、すぐに体育館にホイッスルが響き渡る。
「クラスマッチでアリウープとか…」
「ふざけんな一組!何考えてんだお前ら!!」
「うるせぇ!これがふざけてるように見えんのか二組!!」
「勝つことしか考えてないに決まってんだろ!言わせんな恥ずかしい!!」
ギャーギャー騒いでいても時計が止まっている訳でもなく、既に点差はワンゴール差まで詰まっていた。
ヤバい、と。
言葉には出さずともその場にいる二組の生徒全員が感じていた。
このままだとよく分からないに負けてしまう、と三郎は八左ヱ門の方をちらりと見る。
同じタイミングで視線を会わせてきた竹谷に一つ頷くと三郎の纏う雰囲気が変化した。
それは竹谷も同じで、所謂『本気モード』というやつだ。
「行くぞ、ハチ」
「あぁ、俺の天使が応援してくれてんのにこんなあっさり逆転されてたまるかってんだ」
「竹谷せんぱぁい!」
「ん?」
「おい、バカ!!」
「え?…うわっ!」
それは条件反射というやつで。
普段とは違う、リラックスした時特有の少し高い孫兵の声が自分を呼ぶの聞いた八左ヱ門は思わずといった様子でコートの外側に振り返った。
その横を勘右衛門がドリブルで通り過ぎ颯爽とレイアップシュートを決める。
ダムッ、と跳ねるボールを呆然とした顔で追う竹谷に、何してんだよと三郎が近付いてきた。
「集中しろよハチ!」
「…今…え?」
「あーもう、お前の天使も所詮一組なんだよ!今は敵だ、敵。敵だって認識しろ。いちいち声拾ってんじゃねーよ」
「そんな…孫兵…っ!!」
「竹谷せんぱい!ぼく…ぼく…っ!!」
「そんな…敵なんて…孫兵ー!!!」
試合が中断し困惑している審判に勘右衛門は時間がおしているから放っておこうと提案し、実質5人対4人の状態で試合を再開させた。
当たり前のように開いていく点差に三郎は諦めたようにため息をつく。
「ねぇ、氷華ぁ。ちょっとやり過ぎなんじゃない?」
「足りないくらいだよ。そもそもハチを引きつける作戦を最初に言い出したのは伊賀崎だし」
「…ねぇ、他の学年って」
「こっちには三郎次と今福がいるからな。伊紗と黒木のバックアップで低学年は余裕で制圧してある。中等部の三年は仲良しこよしだから伊賀崎の涙で一発だ」
「エグいことしてるねぇ」
「高等部は一筋縄ではいかないがあのお二人と付き合いが長い分むしろ本気だ。今の私達のようにな…」
グッと拳を握る氷華を横目に見ながら、自分は二組で良かったと心の底から思う雷春だった。