携帯に残っていた下書きをちゃんと書いてみました。
大昔に書いたガクカイの続編です。
和風なの中華風なのか定かではない戦国時代パラレルです。
ガクカイ主従。
皇子→カイ(代替わりしたばっかり)
軍師→ガク(天才。元々カイの遊び相手からの大出世)
人の上に立つ才覚を知りながら、
私は貴方の目をふさぐ。
鬼神の如き武勇を知りながら、
私は貴方を傀儡にする。
満月の宴が終わると、戦の匂いがきつくなる。
作物の収穫と降雪に挟まれた、不穏な気配に満ちる季節だ。
「河を背に…?」
「左様でございます。隊は八、その内三を北上させます」
「……麓で挟む、か」
「ここまでが四日となります」
「分かった、次を、」
カイにとって、練り上げられた戦術を理解するのは難しい。
カイは先代に似ず根っからの武人気質であり、本来ならば軍議など出ずに合戦場で兵を率いる方が余程向いている。
線の細い身体からは到底感じることは出来ないが、私は只の一度も刀で勝たせて貰ったことがない。
だからこそ、私は軍師を志したのだけれど。
「戦は…難しいものだな、神威」
「今回は勝利以外はいらぬ、と聞いておりますので」
「私は王が替わってもこの国は強いのだと民に示したい。…安心を与えたいと思っている」
「立派なお考えでございます」
「…戦どころか初陣の経験さえない私の考えだ。立派などと言ってはいけない」
これほどまでに清らかな魂を持つ者がこの世にあることが私には奇跡のように思えてならない。
ずっと一緒に、と。
そう笑いあった子供の頃からカイは少しも変わらない。
だから私は守りたいと思っている。
カイの望む豊かな国も、共に支えるという約束も。
「続きを」
「はっ」
カイを玉座に縛り付けているのは私だ。
野山を駆け回り、兵に混ざって体を鍛えていた頃に比べれば今の暮らしは随分と辛いものに違いない。
それでも私はカイを合戦に出すつもりはない。
そのために今の私があるのだから。
花を愛でるよりに丁寧に。
決して散ることのないように。
月を愛でるより密やかに。
決して遮ることのないように。
花弁を散らし、光を散らす雪など除いてしまおう。
ただそのまま、あるがままに。
閉じ込められたことには気付かないで。