黄色い水仙
2013.7.18.Thu 02:01
[ギンヒツ]



ちょっぴり切ない、そんな彼ら

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あいつと付き合った期間は半世紀程だろうか。
何がどうしてこんな関係になったのかは忘れたが、あいつを愛して後悔したことは一度もない。



その気持ちは今も変わらず。市丸、お前だけを。






あいつは気紛れで花を摘んでくる時があった。
何処からだかは聞いたことは無いが、いつも綺麗な花だった。
そしてその花が持つ意味を俺にこっそり伝える。
呆れたり、少し悲しかったり、恥ずかしくなったり、と様々な気持ちにいつもさせられた。


花を贈るなんて気障な男だ。


大胆に千切られた一輪の花をいつも丁寧に花瓶に生ける。
その気紛れで茎を千切られた花を想うと、いつも少しだけ心が痛んだ。

最後に贈られたのは白い水仙だった。
月がよく見える、そんな夜。
その意味は言わなくても知っているだろう?と言われた。
水仙は俺が所属する十番隊の隊花なのだから、知っていない方が色々とまずい。

俺はその時、またいつもの気紛れなのかと呆れながらその花を受け取り花瓶に生けた。

本当はこの時、心の何処かで恐れていた危惧を気付かない振りをしたんだ。



「冬獅郎はこの水仙みたく、いつまでも綺麗でおってな」


月夜に照らされたあいつは、普段以上に蒼白く、今にも消えてしまいそうだった。







今年は黄色い水仙も植えてみましたよ、と部下に笑顔で教えてもらった。
自隊の花壇で植えてある隊花はそれはそれは綺麗に咲き誇り、白と黄色の水仙で目を癒してくれた。

いけないとは思ったが指先で、一輪摘んでみた。
花は色によって同じ種類の花でも持つ意味が違う事を、あいつは知っていただろうか。


いつも貰ってばかりだったから、
この花をあいつに渡してやりたかった。
渡せなくなる前に、どうしても。




「この想いは、何処に持っていったらいいんだろうな」







(黄色水仙:私の元へ帰ってきて)









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